パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

明日の『ETV特集』は気鋭の金本麻理子ディレクター作品だよ!

まずは以下に『ETV特集』公式サイトから紹介文を引用する。

シンドラーユダヤ人〜ホロコーストの時代とその後」
ユダヤ人を救った男」として知られる実業家、オスカー・シンドラー。そのシンドラーが残したトランクが見つかった。トランクの中には、戦争中、シンドラーが作成した書類と手紙。そして戦後、シンドラーが救ったユダヤ人(「シンドラー・ユーデン」)たちと交わした手紙と写真が詰まっていた。シンドラーが救ったユダヤ人たちは、戦後安住の地を求めてイスラエルやアメリカへと渡っていった。一方シンドラーは戦後、アルゼンチンへ渡り事業を起こすも失敗。ドイツに帰国するが、立ち上げた会社は倒産。そんなシンドラーに、かつてシンドラーが救ったユダヤ人たちは援助を申し出、シンドラーの生活を救った。彼らはシンドラーを何度もイスラエルやアメリカに招いた。戦後、ドイツで失意の日々を送るシンドラー。しかしユダヤ人たちにとってシンドラーはいつまでも英雄だった。番組では、発見された資料や新証言をもとに、シンドラーによるユダヤ人たちの救出劇の知られざる舞台裏と、戦後のシンドラーユダヤ人たちの交流を描く。それぞれが歩んだ激動の人生の軌跡をたどりながら、今も消えない戦争の傷跡の深さ、そしてそれを越えようとする人々の絆(きずな)を見つめる。
http://www.nhk.or.jp/etv21c/update/2010/1024.html

公式サイトにはディレクター名なんて書いていないが、恐らく今年8月10日にNHK総合で放送された「ホロコーストを生きのびて〜シンドラーユダヤ人 真実の物語」の再編集版だと思われる。

NHK総合ホロコーストを生きのびて〜シンドラーユダヤ人 真実の物語」
2010/8/10初回放送、50分、撮影:須田眞一郎、取材:木村公一郎、ディレクター:金本麻理子、制作統括:山元浩昭/宮田興/池田敏郎、制作:NHKエデュケーショナル、制作・著作:NHK/バサラ
シンドラーのリスト」、「ユダヤ人を救った男」として知られる実業家、オスカー・シンドラー。そのシンドラーが残したトランクが発見された。中には、戦後、彼が救ったユダヤ人たちと交わした手紙や写真が詰まっていた。戦後、シンドラーが救ったユダヤ人(シンドラー・ユーデント)からは多数の手紙が届く。「あなたの事を忘れません」、「人間の善意をあなたは示してくれました。それは私の生きる指針になっています」……。ナチス・ドイツの強制収容所から多数のユダヤ人の命を救ったシンドラーは戦後、アルゼンチンに渡る。その時ほとんど無一文。ユダヤ人を救うため私財を投じた為だった。アルゼンチンで、事業を起こすも失敗。その後、ドイツに帰国するが、「元ナチ党員」のため、銀行の融資も受けられず、事業は失敗した。そんなシンドラーに、かつて救ったユダヤ人たちがこまめに手紙をよこした。近況を尋ね、相談にのる。稼いだお金をシンドラーに送り、そして定期的にイスラエルに招いた。番組では、発見されたシンドラーのトランクに残された手紙や資料、そして戦争中シンドラーが救い、戦後はシンドラーを支えたユダヤ人たちを取材。その交流から、その後もずっと残った戦争の傷跡の深さ、そしてそれを乗り越えうる人間の絆を見つめたい。
http://www.nhk.or.jp/war-peace/summer/onair03.html#038

放送時に自分も見たわけだが、まあ正直失敗作だった。要するにシンドラーという知名度のある名前をタイトルにして餌をまいた上で、本当はホロコーストを生き残った被害者/加害者の戦後が描きたかったのだろうけど、焦点がぼんやりしちゃった印象があった。逆か、シンドラーのトランクから取材を始めたら、枝葉だったはずの取材が充実し過ぎて焦点がぼやけたのか。エンドクレジットを見てディレクターが傑作「証言記録 マニラ市街戦」を作った期待の金本氏だと分かり、少々がっかりした記憶がある。今回90分バージョンで再編集した版が放送されるということなので、今度こそ期待したい。
制作会社バサラの公式サイトを見たら放送予告がちゃんと載っていたので、それも以下に転載しておく。

8月:「ホロコーストを生きのびて〜シンドラーユダヤ人の真実の物語〜」
ナチス・ドイツの大虐殺から1200名のユダヤ人を救ったオスカー・シンドラー
ユダヤ人を救った救世主”として映画でも有名だ。
なぜ、シンドラーユダヤ人を救ったのか?
―――その問いに憤る生存者がいた。
なぜ、シンドラーは、ユダヤ人を救えたのか?
―――その問いに語られたことのない事実を語った生存者がいた。
戦後65年経て、今も残るホロコーストの傷は?
―――その問いに胸を痛めながら答える生存者たちがいた。
これは、ホロコーストを生き延びた人々の真実の物語という番組です!
みなさん、ご覧ください!
ディレクター:金本麻理子
・・・
10月:受賞報告
8月にNHK総合にて放送された「ホロコーストを生きのびて シンドラーユダヤ人 真実の物語」がNHKエデュケーショナル社長賞を受賞しました。10月24放送ETV特集でも89分版として、新たな内容もふんだんに加え放送予定です。49分版とは異なった仕上がりになりそうです(現在制作中!)
ディレクター:金本麻理子 取材:木村公一郎
・・・
10月:ETV特集シンドラーユダヤ人〜ホロコーストの時代とその後〜 』
ナチスドイツによるユダヤ人の大量虐殺、ホロコースト
狂気の時代、1200名のユダヤ人の命を救ったドイツ人・オスカー・シンドラー
シンドラーは、なぜ、ユダヤ人を救ったのか?
そして、救われたユダヤ人は、どのような戦後を歩んできたのか?
そして、救ったシンドラーの戦後とは?
実は、戦後もずっとユダヤ人とシンドラーの交流は続いていた。
なぜ、彼れの絆は続いたのか?
そこには、知られざるシンドラーユダヤ人の真実の物語があった。
きれいごとでは語り切れない事実と壮絶な記憶をも乗り越える人間のたくましさ
今夏、49分版では語りきれなかった物語が描かれています。
ぜひ、ご覧ください。
ディレクター:金本麻理子 取材:木村公一郎
http://www.basara-tv.com/

「あの出来でNHKエデュケーショナル社長賞かよっ」とか「より一層シンドラーを中心にした物語にしたらますます微妙じゃね?」とか気になることはあるけれど、明日の放送を楽しみにしよう。

折角の更新機会なので、ついでに書いておこう。
以下のコメントは元NHKディレクター相田洋氏が2010年6月30日放送のNHK-BS2『ザ・ベストテレビ』でお話されたこと。

僕ね、これを見ているお客さんに、テレビの向こうのお客さんに言いたいんですよ。テレビってね、番組ってね、個人が作るんですよ。そりゃあ色々あるけども、放送局じゃない、個人が作るんですよ。ですから、放送の最後に出てくる名前ね、「ああ、この人が作ってんだ」と。で、その人が良い番組を作ったら、次、その人を探して欲しい。そうするとね、ものすごく作る人の張り合いになりますからね。

良質なTVドキュメンタリーを数多く作ってきた相田氏には最大限の敬意を払いたいし、既にNHKを退職してフリーの身である相田氏に言う筋合いのことではないかもしれないが、敢えて言おう。「アホ言うなよ、じいさん」と。NHKが放送前にスタッフクレジットを公開してくれないと、見終わった後に作った人の名前が分かっても全然次に繋がらないではないか。映画に喩えてみれば分かるだろう。映画館へ行って映画を見てエンドロールを読みながら「あー、この映画の監督、スピルバーグだったんだ。道理で面白いと思った」なんてことがあるか? あるわけねえ。普通は公開前に「スピルバーグの最新作!」って煽るから、名前に釣られて客が足を運ぶんだろうが。放送する前に誰がディレクターなのかくらいは番宣ページで広報しろよ、NHKのバーカ。とりあえずこの10年、ネットの片隅でドキュメンタリー番組のスタッフクレジットを記録する簡単なお仕事を続けてきた私には「NHKは公式サイトでスタッフの資料くらい検索出来るようにしろよ」と言う権利くらいはあるだろう。