パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

NHK総合『勤労女子ドキュメント カンテツな女』

市民団体からの抗議を受けたというニュースでこの番組を知り、直後に再放送があるというので録画し、後半(5〜7回)の再放送も楽しみにしていたが結局されなかったようだ。公式サイトにもディレクターズブログにも目を通す暇もなくあっという間に更地となった。唯一残っているツイッターの過去ログ(http://twilog.org/nhk_kantetsu)を読むと、番組放送中にディレクターが収録裏話をつぶやくというDVDオーディオコメンタリーのリアルタイム版が行われていて非常に興味深い。恐らくは市民団体の言い分の方が法的に正当だった箇所があったのだろう(『ER』の統合失調症エピソード放送中止と同様のケース)。だが、こういうエキサイティングでスリリングな試みのログがネット上に残されないというのは何とも残念だ。

「第1夜 美容師 蛭田恵子」
2010/3/1放送(1/20初回放送)、30分、撮影:李忱、取材:土生田晃、ディレクター:金本麻理子、制作統括:奥平裕子/若井俊一郎、制作:NHKエンタープライズ、制作・著作:NHK
この番組、てっきり若手ディレクターの登竜門的位置づけかと思いきや、初回から「マニラ市街戦」を撮ったスター登場。しかも外部制作会社の人。と思ったらエンドクレジットにバサラって出なかった。エンプラに移籍したの?それともフリーの扱い?(余所のサイトをみると、初回放送前はNHKエンタープライズ/バサラという表記だったみたいだが)

「第2夜 ディスプレーデザイナー 持木慎子」
2010/3/1放送(1/27初回放送)、30分、撮影:井ノ口輝憲、取材:野田優子、ディレクター:漆山真生、制作統括:若井俊一郎、制作・著作:NHK
映像とディレクターの質問がリンクしてないっていうか、あらかじめ考えてきた質問をぶつけているというか、あまり映像メディアとしての面白さはない(言い換えると文字媒体ルポで代替可能)。けど、取材している最中に偶然面白いことが起こるはずもなく、作為的に何かハプニングを起こさせるのもなんだし、淡々とある日の日常を撮るというコンセプトは個人的に嫌いではない。

「第3夜 介護福祉士 落合水紀惠」
2010/3/1放送(2/3初回放送)、30分、撮影:馬場宏子、取材:野田優子、ディレクター:吉岡智子、制作統括:若井俊一郎、制作・著作:NHK
今回見た5本の中では“勤労”と“女子”のバランスが一番良かった。というか、人間的魅力にあふれた素材を見つけた時点で勝利確定。意外と知られていない夜から明け方にかけての介護の現場と、様々な職を経た末に介護の仕事にたどり着いた気風の良い女性という強力コラボ。

「第4夜 雪を降らせる人 鈴木清美」
2010/3/1放送(2/10初回放送)、30分、撮影:佐藤二郎、取材:浦田淳、ディレクター:本間かほり、制作統括:小川正道、制作・著作:NHK
“女子”よりも“勤労”に寄っちゃった内容。鈴木さんが世に知られていない仕事を紹介する番組のナビゲーターみたいになってた。ディレクターさんが1日弟子入りみたいな感じで。まあ「世に知られていない仕事を紹介する番組」は、仮に主人公が女性じゃなくても面白い。

「第7夜 貨物船船長 寺田美夏」
2010/3/2初回放送、30分、撮影:高橋剛、取材:野田優子、ディレクター:加藤恵子、制作統括:村山淳/若井俊一郎、制作:NHKエデュケーショナル、制作・著作:NHK
夜中に書いたラブレターではないが、徹夜した夜明けに友人同士でウダウダ語っている内容も後から振り返ると結構恥ずかしい。取材者と被取材者の間柄でそういう空気感を生み出した手腕は見事だが、寺田さんはこの映像の放送によくOKを出したと思う。
個人的には、船長という職業を選ぶくらい自分の価値観をちゃんと持っている人に「自分が働いている間、夫が家で待っているという逆転現象をどう思いますか?」みたいな旧来の価値観と照らし合わせた紋切型質問をするのは愚問だと思うが、視聴対象の30〜40代女子さんにはやはり気になる質問、需要のある質問なんだろうか。分からない。

5本見れば“勤労女子ドキュメント”と銘打っても、どこに力点を置くかはディレクターの個性で全然違うというのがよく判る。なのに、巷からは《NHK》という総体の意思があるようにとらえた批判が出たり、中立客観の視点があるように指摘する声が後を絶たないのは残念だし、他方NHKもディレクターの顔・個性をもっと大事にすべき。せっかくディレクターが書いたブログのログくらい残しておいて欲しい。

ものすごい蛇足。「完徹」って朝から働いて夜になっても終わらなくて次の日の朝を迎えることかと思ってた。夕方から働き始めて翌朝はカンテツではなく、ただの昼夜逆転じゃね?