パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

逮捕されたNHKディレクター、その後

ここはネットで拾った情報を載せる素人ブログで、独自取材等はないことを予め断っておく。それから、ここではディレクター氏の姓名は書かないことにした。初期報道で実名が出たのならば、後日談も実名にすべきかもしれないが、どうせ検索すれば分かることだし、ブログ主はへたれだし、ここでは要らぬ波風を立てない方向で。余談だが、NHK放送文化研究所が出版している雑誌『放送研究と調査』2008年2月号の巻頭特集は「取材現場で何が起きているのか〈上〉〜2007年NHK記者、カメラマンアンケート調査結果から」(http://www.nhk.or.jp/bunken/research/kokunai/kokunai/kokunai_08020101.html)で、いかに一般人のメディアへの不信が強くて取材が困難になっているかという現場記者の愚痴も面白いが、ケースによって実名か匿名かをどう判断するべきか、記者やカメラマンが迷いつつ回答しているのも興味深い。暇な人は図書館にでも行って読んで頂きたい。

日本国憲法誕生―知られざる舞台裏

日本国憲法誕生―知られざる舞台裏

昨年2月に放送された『ETV特集』「焼け跡から生まれた憲法草案」、4月に放送された『Nスペ』「日本国憲法誕生」をまとめた本が1月に出版された。憲法60年という話題性から考えても2007年のうちに出版しておきたかったはずだが、今年にずれこんだのは、やはり担当ディレクター氏が東京都迷惑防止条例違反容疑で現行犯逮捕された件の御沙汰が出るのを待っていたのだろうか。
その後日談。

【社会】痴漢で逮捕のNHK職員、不起訴処分に
http://news22.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1195773361/l50
1より引用

1 名前: ◆10000/JzLc @よろづ屋φ ★ [sage] 投稿日: 2007/11/23(金) 08:16:01 ID:???0
★痴漢で逮捕のNHK職員 不起訴処分に
 今年6月、電車の中で女性に痴漢をしたとして逮捕されたNHK職員の男性が、不起訴処分になっていたことがわかった。
 不起訴処分となったのは、NHK制作局・××××ディレクター。××ディレクターは今年6月、帰宅ラッシュの電車の中で女性(33)にほおを擦りつけたなどとして、迷惑防止条例違反の現行犯で警視庁に逮捕され、釈放されていた。
 その後、女性との間で示談が成立したことなどから、不起訴処分となった。
http://www.news24.jp/97875.html
http://sousu.blog79.fc2.com/blog-entry-326.htmlより〉

ソースは、日テレNEWS24のサイトに載った記事を2ちゃんのニュース速報プラス板で取り上げた記事をまとめサイトが取り上げたものしか見つからなかった。よって、ここでは曾孫引き(転載の転載の転載)になる。逮捕時にあれだけ大々的に取り上げたのだから、決着もちゃんと報道して欲しいものだが、まあマスメディアとはそういうもの。もしかすると、第1報で大きく取り上げた方もバツが悪くて、風化させるために続報しなかったのかもしれない。それだとこのエントリーは余計なお節介ということになる。だが、NHK会長の会見も出来る限り読んだが何も言及していないし、何となくなかったことにしてしまう報道姿勢は如何なものかと思うので、このまま続ける。ちなみに、ディレクター氏の名前は『ETV特集』のエンドクレジットで何度か見掛けたので、恐らく既に職場復帰しているようだ。
今さら事件の概要を説明するのも何だけど、

午後11時40分ごろ、京王線大前駅から、新宿発橋本行きの通勤快速電車に乗車、同駅で続いて乗り込んでいた帰宅途中の女性会社員の背後に立つ形で電車が出発した。電車が走りだすと、××ディレクターは目の前の女性の背後から、自分の左ほおを女性の右ほおにすりつけたという。女性は嫌がって顔を背けるなどしたというが、××ディレクターはほおずりを継続したという。当時は金曜日の夜で車内は混雑していたが、××ディレクターの背後に乗車していた男性会社員(46)が、ほおずりを嫌がっている女性を発見。××ディレクターを取り押さえて、次の桜上水駅で3人で下車すると、駅員に引き渡した。
〈6月6日付の日刊スポーツ19面を一部改変〉

酔って眠くて狭くて、目の前の女性の肩に顎を乗せたまま頬ずりする。40歳過ぎた大の大人としては馬鹿だと思うし、その場で現行犯逮捕されても仕方ないかもしれないが、それで会社をクビになるようなことでもないように思われる。被害者の方と示談が成立して不起訴処分となり、職場復帰。真っ当な流れだろう。
そもそもこの事件が何故大きく取り上げられたかといえば、当時、昨年5月に路上で女性に抱きついたNHKアナが逮捕、6月には16才少女に4万円渡して買春したNHK職員が逮捕されていた。これらとセットで「NHKの不祥事」として報道されたため。この事件を他のケースと同等に扱うべきだったのか、個人的には疑問が残る(もちろん「局内で綱紀粛正が叫ばれている時に馬鹿なことを」という観点から批判するのはアリだろうが)。先に紹介したアンケートの中に「食品偽装問題に絡んで、町の老夫婦がやっている豆腐屋の豆腐にハエが入っていたことを同列に並べて報道したら、その豆腐屋がつぶれた。こういう報道はおかしい」という趣旨の回答があった。現場で取材する人間の尤もな実感だろうが、まあ本質的には異なっている事件を「形式的には似ているから」といってセットで報道するのは、マスメディアの習性だから仕方ない。巻き添えを食った人は気の毒だけど。
逆にいうと、今まで書いてきたような突発的に起こり得る逮捕に対して「憲法擁護派ディレクターが逮捕されたのは政府の罠だ!」みたいな陰謀論を唱えていた人達もどうかと思う。いわんや、政府の悪口を言いたくて「だいたい、2分間も頬ずりされて、そのままにしている被害者がいるのか?? 」なんて被害者の方を侮辱するような言動は反省すべきではないだろうか。敢えて当該ブログを晒すようなことはしないけど。また「これからは、政府にとって都合のいい事を言う御用市民や右翼以外は、飲酒して電車に乗ることは絶対に避けなければならない」「この事件の真相はまだ不明だが、いずれにしても、与党に従順でない人は、 自宅以外の場所で飲酒はしないほうが無難であるように思われる」なんて文章も気になる。敢えて当該ブログを晒すようなことはしないけど、別に御用市民や右翼や与党に従順な人間でも、飲酒して電車に乗って他人に迷惑を掛けるべきではないと考えるのが普通の感覚だと思う。まあ皆さん、憶測で言いたいことだけ書いて、その後どうなったかなんて知らんぷりなのが、最新流行のブログのあり方みたいなので仕方ないが、敵を叩くためならどんな中傷もOKなブログというのは、読んでてもあまり気分が良いものではない。
以上、やった行為に対する社会的制裁が厳し過ぎるのではないかという観点からディレクター氏の、たとえ他の政策部分でろくでもない奴等だったからといってやってもいないことで濡れ衣を着せるのはよくないという観点から安倍政権の、それぞれ名誉を回復するためにこのエントリーを書いたわけだが、我ながらまとまりのない文章になってしまったので、あまり効果はないだろう。

最後にディレクター氏へ一言。数日間留置所へ勾留された上で、今もNHKに残って番組制作を続ける幸運にも与れたのだから、その稀有な体験を活かした番組を作るべきではないか。司法制度や自分に対するマスメディアの報道姿勢等に思うこともあっただろうし。『創』辺りに手記を載せるにしろ、ETVで45分くらいの番組を作るにしろ、自らの身を削るようにして番組を作るのがジャーナリスト/ドキュメンタリー作家ではないのか。そうしなければ、いくら護憲の優れた番組を作ったところで「結局は憲法の精神なんてどうでもよくて番組のネタとしか見てなかったのね」と言われてしまうだろう。

少し余談。今はてなはまぞうで上の書籍を検索したら、ついでに番組のDVDがヒットした。

NHKスペシャル 日本国憲法 誕生 [DVD]

NHKスペシャル 日本国憲法 誕生 [DVD]

これの発売日が2007年11月22日なので、これに合わせて日テレNEWS24さんが「おいおい、NHKさんよ。痴漢の件はどうなっとんのなら? 有耶無耶にするつもりですか?」と問い合わせた回答が、最初に曾孫引きしたニュースという可能性が推測出来る。

(2008年3月28日追記)http://d.hatena.ne.jp/palop/20080328に後日談あり。