パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

『地球特派員スペシャル』「カーボンチャンス〜温暖化が世界経済を変える」

2008/1/1初回放送、50分×2、スタジオ進行:寺島実郎日本総合研究所会長)、スタジオゲスト:伊藤洋一住信基礎研究所主席研究員)、江川紹子(ジャーナリスト)、江上剛(作家)、金子勝慶應義塾大学教授)、榊原英資早稲田大学大学院教授)
撮影:横山哲也/今井巧/江袋宏、コーディネーター:田村都志夫/孫勇民、ディレクター:原田親/橋本直樹/渡辺秀治/菅原章五、制作統括:堅達京子/佐藤謙治/行成博巳、共同制作:NHKエンタープライズ、制作協力:スピリッツ・プロジェクト、制作・著作:NHK
伊藤氏がドイツと米国、江川氏がドイツ、江上氏が中国を取材。4つのパートが約20分ずつで、まとめに約20分。番組を見ながら「エネルギー問題は国家戦略の問題であり、環境問題は外交問題であり、経済問題は世界競争〜」みたいなことをメモしていたら、ラストで寺島氏が「3つのe」とか言い出したので、そう間違った感想を抱いたわけではないと思う。金子氏や榊原氏は市場原理主義新自由主義)批判が好きだけど、日本にあるのは市場原理主義というよりは民意原理主義ではないかと思う。メディアが民意を煽り、民意をフィードバックしてメディアが番組を作り、「政府が悪い、権力が悪い」と言い続けてきたのだから、そりゃあグランドデザインを描いても感情的反発で吹っ飛ぶのなら、問題が起きる毎に個別に謝罪して特別措置法を作って後はやり過ごした方が楽だと考える気持ちも分かる。もちろんメディアは悪口を言うのが仕事で、間に受け過ぎる方が悪いのかもしれないが、どうも「外交は駆け引きではなく誠実さ」「スパイは法ではなく道徳で防ぐ」みたいなへんてこりんな思想があるようなないような。「国民が感情的に反発することを先読みした上で、それを折り込んだ戦略を練るのが優れた官」という考えもあろうが、仮に「先読みして折り込み」がすっぱ抜かれると「国民を騙す行為だ」という更なる反発が生まれる。「先読みして折り込んだことがばれるリスク」を想定すると、結局「メディアを通じて全部情報をリークするから、後はお前等が感情で好きに決めろ」となる。おー、今の日本とあまり変わらない。

少し前に、政治学者先生のブログからのリンクやら検索やらで竹井隆人という人が色々面白いことを言っているのを発見した。集合住宅におけるデモクラシーとかガバナンスとか共同性とかそういう話。日本では、農民が生きて行くために必要だった村社会を解体した後に、個人が砂粒のように消費社会を舞う時代が来て、その先が来ていない。たとえば集合住宅において夏祭りやら餅付きやらの情緒的なイベント繋がりではなく、議論を戦わせて共同体ルールを作るという経験を持つ人がどれだけいるか。番組ではドイツの小さな村が村ぐるみで発電施設を保有するネタが出てきたけど、あれは農村地帯の方が共同体意識が残っていそうだし、ドイツ人は住民同士で議論する習慣を持ってそうだし、というのはドイツに対する自分の勝手な思い込みにしても、あれを日本に持ち込んでも無理だと思うのは、別に日本人が環境に関する意識が低いからとかではなく、自ら考える個と支え合って暮らす共同体のセットが日本では想像しにくいから。結局、環境問題はエネルギー問題でも経済問題でも外交問題でもなく、個人と共同体の問題。
今の日本で最も砂粒なのは団塊ジュニア独身男だと勝手に決めた上で、たとえば割と環境意識が高くて自分でちゃんとゴミの分別もするタイプの男、それなりに知識はあるけれどコミュニケーション能力は低い男が、教養としてドイツ等の環境先進国の事例を聞いては耳年増になって日本の現状にいらだち、また大した仕事にもつけなかった故に生活にも潤いがない自分の現状にいらだち、それらが複合的に絡まったある日、スーパーマーケットの回収ボックス前で「お前等、牛乳パックはちゃんと洗って乾かしてから持ってこい!!」とか叫びながら、男が買い物客にハサミで切り付ける事件とか起きそうな気がする。世界の環境問題と自身の生活問題が変な形で繋がって暴発した「セカイ系環境テロ。と、あいかわらずの団塊ジュニア男論でまとめて終わる。