パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

『BSドキュメンタリー』「50年目のリトルロック〜アメリカ 消えぬ人種差別」

2007/11/23初回放送、50分、取材・撮影:Brent Renaud/Craig Renaud、ディレクター:遠藤長光、制作統括:薮並整司/三浦尚、共同制作:NHKエンタープライズアメリカ、制作・著作:NHK
傑作「アーカンソー州兵」シリーズでお馴染みRenaud兄弟の新作。たった50分間でこれだけ登場人物が出てくると見る方の注意が散漫になり、「主役を定めて深く描いた方が分かりやすいのに」といった不満を持つのだが、これは短い説明で見事に個々の事情がつかめる編集になっていた。流石だ。「いや、日本側のスタッフが上手いのかもしれない」と思ったら、本国ではHBOで放送されて既にDVDにもなっていた。そちらは70分バージョン。

Little Rock Central High: 50 Years Later [DVD] [Import]

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リトルロックナイン」は、単に頭が良かったというだけでなく、メジャーリーグにおけるジャッキー・ロビンソンのような使命感を持ったハートの強い人間だったのだろう。今の野球界は人種によって分裂していないと思うが、やはりそれはみんな金持ちだからだろうか。想像してみる。リトルロックで成功したアフリカ系は、セントラル高校近くのスラムを出て子供は別の高校に通うから、セントラル高校に残るのはますます貧しい層ばかり。高校の周辺で発砲事件が起こったり、アフリカ系の生徒が殺されたりしたら、普通の金持ち白人は安全な私立高校に転校させそうだが、そこはセントラル高校自身がブランドであるし、おそらく校内にはかなりの警備員がいたりするのだろう。白人の生徒が1人でも銃撃に巻き込まれて死んだら、それまでの矛盾が吹き出しそうだけど、「麻薬抗争に白人のお坊っちゃんは巻き込まない」とか「アフリカ系に向かってヘイトスピーチはしない」とか、そこはお互いに決定的な対立は避け、体面が保てる程度には「制度」を守るための暗黙の合意があるのかもしれない。「制度的人種差別」(institutional racism)の「制度的」は、法的にカチッと決まっているというのではなく、慣習から成り立っているシステムみたいなニュアンスのようだ。
途中まで見ながら、どちらかといえば人種対立というよりは金持ち対貧乏人の間にあるライフスタイルや価値観、世界観を共有していないグループの無関心と対立に見え、「学校を変えるならば、他地区へ引っ越したアフリカ系成功者の御子息が敢えてセントラル高校に通うようにならないと無理だ」と思っていたら、まさにそのような自動車持ってて頭が良くて生徒会長に立候補するだけの問題意識もあるブランドンが出てきた。所詮一般視聴者が考えることなどお見通し。
ボクサー志望の男子が家族と不仲で住むところを追い出されて、段々と追い詰められている様は『アンジェラ』のエンリケ(リッキー)を思い出した。

『BSドキュメンタリー』「お父さんに会いたい〜アメリカ・崩れる人工授精の匿名性」
2007/11/24初回放送、50分、語り:ayako_HaLo、撮影:江袋宏、ディレクター:伊東亜由美、制作統括:下田大樹/佐藤謙治、共同制作:NHKエンタープライズ、制作・著作:NHK
「ドナー・シブリング・レジストリー(Donor Sibling Registry)」は初めて聞く言葉。"Sibling"は兄弟とか同胞とか科学的な感じで使う単語みたい。検索したら、2007/9/5の日テレ『ザ・世界仰天ニュース』で丸被りのネタをやっていた(http://www.ntv.co.jp/gyoten/oa/070905/01.html)。『仰天ニュース』の元ネタであるNYタイムスの記事をNHKエンプラの人が読み、別の例を探したのが多分この番組。
アシュリーが「その間に割って入って、問題を起こしたくはありません」と優等生的コメントを言い終わった後、5秒間くらいずっと無言だけど心の中で葛藤しているような表情をした顔にカメラを向けたままのシーンが、報道系ではなく人間物語系のセンスだと思った。
「何で素人がナレーションしているの?」と思って検索したら、結構プロとしてナレーションしている人だった。どんな効果を期待して起用したのか。ニュース口調ではなくヒューマンドキュメント風にしたかったとか。

『BSドキュメンタリー』「人身売買から少女を救え〜ネパール・立ちあがる被害者たち」
2007/12/1初回放送、50分、撮影:柿木喜久男、取材:長谷川まり子、ディレクター:青木亮、プロデューサー:熊谷均、制作統括:下田大樹/鳥本秀昭、共同制作:NHKエンタープライズ、制作・著作:NHK日本電波ニュース社
録画したまま見ないで消そうかとも思っていたが、本屋で長谷川氏の著書が目にとまったので番組を見る。
少女売買  インドに売られたネパールの少女たち

少女売買 インドに売られたネパールの少女たち


『BS特集』〈未来への提言〉「国連世界食糧計画事務局長ジョゼット・シーラン〜飢えに苦しむ子どもを救え」
2007/11/23初回放送、50分、聞き手:菊川怜、撮影:手島透/和田肇、取材:黒萩文、ディレクター:市川光、制作統括:堅達京子/白石章治、共同制作:NHK情報ネットワーク、制作・著作:NHK
エチオピアの取材部分が良かった。東京の小学校訪問部分もなかなか。啓蒙ビデオゲーム"FOOD FORCE"はコナミ製(http://www.foodforce.konami.jp/)。自分はマカーなので出来ないのが残念。

『BS特集』〈未来への提言〉「歴史学者ファルク・ピンゲル〜和解への道を模索する」
2007/12/15初回放送、50分、聞き手:近藤孝弘、撮影:ジャン・クロード・ラミジェ/デヤン・ローシッチ、取材:前田海一、ディレクター:山本大輔、制作統括:堅達京子/白石章治、共同制作:NHK情報ネットワーク、制作協力:オフィスボウ/彦由真希、制作・著作:NHK
サラエボの取材部分が良かった。

捕鯨問題にはあまり興味がないのでニュースもチェックしていなかったが、丁野さん目当てに今年最後のBS1『きょうの世界』を見ていたら、反捕鯨の先頭に立つ豪州環境相がミッドナイトオイルのハゲだと知って驚愕。昔から環境問題に熱心だったし、議員になったという話も聞いていたが、まさか大臣になっていたとは。

何とか年内中に録画しているドキュメンタリー番組を見終えることが出来た(本当はまだ『ETV特集』が4本残っているけど)。