パロップのブログ

TVドキュメンタリーの記録は終了しました

『地球特派員2007』「イラク増派に揺れる基地〜開戦4年 アメリカの苦悩」

2007/3/23初回放送、50分、特派員:作曲家・指揮者の伊東乾(東京大学助教授)、スタジオ進行:寺島実郎日本総合研究所会長)、撮影:江袋宏、取材:橋本直樹、ディレクター:原田親、制作統括:堅達京子/佐藤謙治、共同制作:NHKエンタープライズ、制作協力:スピリッツ・プロジェクト、制作・著作:NHK
個人の言動や行動を追ったドキュメンタリーと違い、街の空気を切り取るドキュメンタリーというのは難しいものだと思う。それこそインタビューする相手の選び方やナレーションの付け方でどうとでもなる。「日本は空気で物事が決まる」とか「日本では同調圧力が働いて出る杭は打たれる」とか日本人特殊論があったりするけど、そういう言いたいことを言えなくする場の雰囲気というのはどこの世界でもあるのではなかろうか。では、この番組に出てくるようなケースを、アメリカ南部特殊論でまとめるか、軍隊基地とその城下町特殊論でまとめるか。また、特殊だからこそ取材する価値があるのか、それとも特殊なケースだと思われても、そこに人間社会に普遍的な何かがあるから取材するのか。
フォートブラッグ基地の第82空挺師団を取材。基地の様子を見て「殺人マシーンを作る軍隊訓練の怖さ」というのは簡単だけど、じゃあ皆さんは学生の頃に部活で上級生からアホみたいなしごきを受けたことはありませんでしたか、会社で一体感を高めるために一気飲みをしたりへぼい社歌を歌いませんでしたか、という話である。軍隊は「人殺しという頭のおかしい目的のために、手段として頭のおかしい訓練をする」、日本の会社や学校は「それほど頭のおかしい目的があるわけではないけれど、手段として頭のおかしい訓練をする」、或いは米軍は戦地へ行った兵士の家族(子供)の心をケアするために様々な福利厚生を行っている=「戦争状態を兵士の家族に納得してもらうという頭のおかしい目的のために、手段としてとても科学的/合理的アプローチをとる」というパターンもある。これなんかは「子供に対する洗脳だ!」と怒る人もいるだろうけど、現実への対処法としては間違っているとはいえない。手段が狂っているのか、目的が狂っているのか、狂った目的を遂行するためには当然手段も狂っているに違いないといえるのか。その辺りの見極めをしないと、特に映像の力を使えば、どんな古典的風習や宗教行動だって「無気味」に見せることが出来るのだから。