パロップのブログ

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サワーマのキャプテン翼

例によって例の如く、1年くらい前に資料を集めたまま放置していたネタだが、空前の木村元彦ブームの今だからこそ、完成度は気にせずにアップすることにした。

テーマは外務省による『サマーワキャプテン翼」大作戦』であるが、UG氏のサイト(http://soccerunderground.com/blog/archives/000374.html)でも紹介されていたから、既に多くのサカヲタにも知られていると思う。とりあえず知らない方は、以下の外務省サイトを読んでから続きを読んで頂きたい。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/iraq/renraku_j_0412a.html
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/iraq/renraku_j_0412b.html
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/iraq/renraku_j_0412c.html
ということで、いわゆる「ちょっと良い話」的な紹介をされてきたこのエピソードだが、こうしたキャプテン翼の利用に対して異議を唱えたジャーナリストが木村元彦氏である。

このアンケート結果を翻訳しているころ、現在サマワ自衛隊に帯同している外務省職員から、一つのプロジェクトを聞かされた。中東社会でも『キャプテン・マジェット』の呼び名で人気が高いサッカー漫画『キャプテン翼』を自衛隊の活動にリンクさせ、給水車等にそのキャラクターを書いてイラク人の民心にアピールしようというのである。
版元の集英社はコミックの政治的利用に難色を示しているという。私も絶対に止めていただきたいと思う。
(中略)
いま、外務省がなすべきはこのような小手先の子どもだましのプロパガンダではない。大量破壊兵器製造の疑惑が完全に崩壊した、アルカイダとの関連も否定された。ならば、小泉政権が支持した“イラク戦争の大義”をもう一度検証し、問い直すことだろう。
徹底的にインフラを破壊し、罪なき人々を大量に殺した戦争を支持した責任をどう取るのか。本質を見据えずにアニメで人気取りとは本末転倒だ。(後略)
木村元彦イラクサッカー選手19人に聞きました〜五輪出場選手が見る日本」『週刊金曜日』2004年8月20日号(520号)P.32-33より

その「キャプテン翼」が外務省のアイデアで、自衛隊の宿営地があるサマワ市内に張られることになった。遠くからでもひと目でわかるステッカーだ。
イラクの人々を元気づけるのが目的ですが、まずはこれが日本のアニメで、翼は日本人であることを現地で知ってもらいたい。ひいては親しまれているキャラクターで自衛隊の安全確保を図るのも狙いです」(外務省担当職員)
とりあえず、このほどODAで贈った給水車や給水タンクに張り、給与式の時にお披露目する予定だという。
外務省からすれば、格好の日本PRなのだろうが、日本が世界に誇るアニメの軍事利用の一歩になるのではないかという危惧も当然ある。「キャプテン翼」の版権を持つ集英社でも協力するにあたり、かなりの議論があったという。
「最終的に人道支援の設備である給水車に張るのならば良いのではないかということになりました。でも、もし、米軍の戦車など武器に勝手に張られたらどうするのか。翼のさわやかなイメージは地に落ちてしまう。いったい誰が現地で使用方法をチェックできるのか、随分ともめました」(集英社編集者)
(中略)
サマワに現れた翼のステッカーに子供たちはまず歓喜の声をあげるだろう。しかし、将来、自衛隊多国籍軍参加を経て「翼」が米軍侵略統治の先兵だったと見なされることはないだろうか。
日本サッカーの普及に大貢献した「翼」を絶対に傷つけてはならない。
木村元彦イラクで「翼」の運命は?」『AERA』2004年10月11日号P.33より

木村氏は外務省に腹を立てている。とりわけ、サッカーのこともキャプテン翼のこともロクに知らないクソ役人が「中東で人気があるらしいから」というだけの理由で、軽々しく政治利用していることに腹を立てているように読めた。

で、最初に掲げた外務省サイト『サマーワキャプテン翼」大作戦』の執筆者である「江端康行」を検索してみる。

小学校から高校まで親しんだサッカーを再び始めたのは、サッカーが盛んなブルガリアに赴任していたときです。在ブルガリア日本代表チームを作り、仕事で会った人には名刺と一緒に必ず一言「サッカーはしますか?」。ブルガリア人との熱い戦いを通し、人間同士として生の絆ができたし、初めてサッカーの本当の楽しさを知りました。今も外務省サッカー部で最高年齢選手として汗を流しています。普段は仕事や家族があるけれど、ピッチに立つと、そこは自分だけの世界。自分を取り戻す時間です。特に日の丸を背負って戦う外国人チームとの試合は燃えますよ。
・江端康行「ブルガリアで知ったサッカーの真の楽しさ」より
http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/pr/pub/pamph/g_work/fudangi/index.html

というわけで、生粋のサッカー好きだった。他にも、小学校や高校へ行って国際貢献について講演したり、なかなかフットワークの軽い人物のようだ。
ここで、最初の外務省サイトに戻ってみる。

私はこれまで携わってきた仕事の中で、小泉総理のチェコ訪問にロボット親善大使「ASIMO」を同行させたり、東京で行った西バルカン平和定着・経済発展閣僚会合にサッカー・元ユーゴ代表のピクシーを呼んだりとちょっと変わったこと(=面白いこと)を手がけてきましたので、ここサマーワでも日本とイラクを結ぶ「架け橋」として、人々の印象に残ることを出来るのではないかという気がしていました。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/iraq/renraku_j_0412a.html

というわけで、江端氏が2004年4月に行われたピクシー平和親善大使計画(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/europe/w_balkans/gh.html)の首謀者である事が判明。ピクシーを媒介にして江端氏が木村氏と面識をもっていてもおかしくないと思い、更に検索すると『サッカー批評』23号(2004年6月)に掲載された木村氏の「サッカーの持つ求心力、ストイコビッチが描く夢」に遭遇する。残念ながら原本を入手出来なかったので、内容を要約・紹介している他サイトからの引用をお許し願いたい。

ピクシーの採用を立案した外務省の官僚江端康行氏によれば
ピクシーも平和親善大使としての仕事に意欲を燃やし
「この機会にコソボに行きたい」とまで言っているという。
・『block-notes』の2004年6月25日付(http://aomugio.jugem.cc/?eid=134)より

ということで、恐らく木村氏は江端氏に取材している。というか、そもそも『週刊金曜日』の原稿に出てくる「現在サマワ自衛隊に帯同している外務省職員」は江端氏ではないかという推測も充分に成り立つ。

個人的には、外務省の政策に腹を立てているからといって下っ端役人のやることにまで文句を言わなくても良いのではないかと思う。お偉方が自衛隊派遣を決定した以上、下っ端役人は「自衛隊員が殺されずに済む方法」を精一杯考えるのが仕事なわけで、そりゃあ「今の政府のやり方にはついていけません」と辞表を叩きつけるのもかっこいいだろうけど、内部に留まって出来ることをするのも一つの方法だと思う。
それはともかく、木村氏と江端氏が知り合いならば、回りくどい批判の応酬をするよりも、直接対決して欲しい。ピクシーもの以来の信頼関係があるからか、木村氏は集英社の『ヤンジャン』や『週刊プレイボーイ』に原稿を書いている。『ヤンジャン』といったら、キャプテン翼の総本山である。自分の担当編集者に直接聞いたことを「集英社でも協力するにあたり、かなりの議論があったという」なんて伝聞調で書かなくとも、高橋陽一先生に直接「許可をされましたか? OKした理由は?」と尋ねてみればよいのではないか。ピクシーの平和親善大使だって立派なサッカーの政治利用であるが、大の大人の本人が承諾したのだから問題ない。ならば、大の大人の高橋先生がOKしたのならば、外野がとやかく言っても仕方ないのではないかという理屈も成り立つはず(外務省のイラク政策は別の話として)。
結論としては、木村氏、江端氏、高橋先生、集英社の人を集めて『ヤンジャン』誌上で「サッカーから政治まで」あれこれ話をしてみてはどうだろうかと提案してみる。サッカーバーかなんかでのトークショーでも良い。

マニアックな蛇足。
以上は一般人向けの提案で、以下はハロプロヲタとしての願望。
川淵会長、オシム監督、木村氏、江端氏、なんならアイドル大好きな平田専務理事も連れて、芸能人女子フットサルを見に来て欲しい。「高橋先生率いるヤンジャンシューターズの激励に来ました」と言えば、大義名分も立つ。というか、芸能人女子フットサル自体、川淵会長の発案という設定じゃないか。すっかり権威も失墜した川淵会長だが、女子サッカーの普及とか良いことだってしてきたじゃないか。これを見に来て、初心を取り戻してくれよ。
「女性タレントにフットサルをやらせて、女性にサッカーを普及させよう!」なんてバカな企画が成立するのは多分日本だけだろうし、それを金払って見に来るキモヲタが沢山いるのも多分日本だけだろう。ある意味、ここが日本と日本サッカーの縮図だし、これから日本代表を率いるオシム監督には、この良いのだか悪いのだか訳分からない平和な光景を是非とも見ておいて頂きたい。
ヤンジャンシューターズには、サッカーに関わる女性タレントの中では好感度ナンバー1だと思われる松原渓ちゃんがいるよ。元々は事務所の命令で始めたのに、いつの間にかすっかりハマり、自分のレギュラーラジオ番組で「みんなブラジルが勝つと思ってるでしょ? ジダン選手とアンリの活躍で優勝はフランスだから」とか言い出してる石川梨華ちゃんもいるよ。なでしこリーグ公式サポーターの吉澤ひとみだっているし。なんていうか、皆が和解するには良い場だと思うよ。どうせなら、すかいらーく社長も、モック社長も、ナカータも、ピクシーも、ピクシーの娘もみんな呼んじゃえ。そんで辻ちゃんオシム監督に向かって「アイラブユー」って言えば、すべて丸く収まるよ。