パロップのブログ

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アップフロント版『決定の本質』

 「霞が関官僚日記」(http://d.hatena.ne.jp/kanryo/20040920#p1)で取り上げられていたグレアム・アリソン著『決定の本質―キューバ・ミサイル危機の分析』。詳しくはリンク先を読んでもらうとして、簡単にいうと著者は、ある組織の意思決定モデルの枠組みとして(1)合意的行為者、(2)組織過程、(3)政治内政治、の3つを想定・検討している。これをアップフロント版にしてパクってみようと図書館で同書を借りてみたが難しくて進まないので、適当にお茶を濁して済ます。
(1)合意的行為者…組織には目的があり、その目的に向かって合理的な判断をするに違いない、という見方。だから端からみて解せない決定があると「非合理的」と判断され「きっと裏に何か理由があるに違いない」という陰謀論に繋がる。アップフロントでいう「山崎会長のゴリ推し」となるだろうか。
 これを市井ちゃんのケースに当てはめると「給料や脱退の揉め事に怒った山崎会長は、他のメンバーへの見せしめに復帰したくなった市井ちゃんを潰してやろうと、敢えてフォークやらたいせーやらを押し付けた」という陰謀論になる。というか、私がそう思っていた。
(2)組織過程…政策の立案・決定・実行は、主体(組織の長)の意識的な判断というよりも組織内部の手続きや組織文化に依存する、という見方。
 これを市井ちゃんに当てはめると「市井ちゃんのプロモーションを担当したピッコロレーベルは、演歌・フォーク系が専門だった旧ヤングジャパン主体で、これまでアイドルの宣伝などやった事がなく、精一杯考えてアレだった」或いは「鍵盤楽器で作曲するならば、たいせーでも師匠につけるか→一生懸命取り組めばすぐに凡庸な師匠は超えられるだろう→そこから自分独自の表現を磨けば、40歳くらいには魅力的な女性シンガーソングライターになれるだろう、くらいに思っていた」となる。
 私が最近観に行ったイベントで、高山厳氏が「私は長い間全く芽が出ませんでしが、20数年目に漸くこの曲がヒットしました」と自虐ネタを言って『心凍らせて』を歌っていた。アップフロントは良くも悪くもそういう事務所で、市井ちゃんに関しても心からの善意で本物のシンガーソングライターに育てるつもりだったのだろうとはやや好意的過ぎるか。もっとも市井ちゃん本人は浜崎さんみたいに脱ヲタ相手のアイドル→同性から大人気のカリスマみたいになりたかったのだろう(という風説を読んだ事がある)。
(3)政治内政治…いわゆる「官僚政治モデル」。実際の政策は組織の出力そのままではなく、政府内の個人やグループ間の駆け引きから派生した結果である、という見方。
 市井ちゃん利権に群がった人々がそれぞれの利益を主張し、妥協しあった結果「たいせープロデュースでフォークソングのカバー集を中澤さんと組んでデビューした時は握手会を開き、同時に水着写真集を出しつつ、本人が作詞した曲を混ぜたりしながら、地道にドサ回りをしましょう」という訳分からない戦略になったのだとすれば、本人にとっては気の毒な話。パラパラとめくった同書にも「決定に携わった当事者達も長い会議の末に何故そんな結論に至ったのか分からないだろう」という記述があったような記憶がある。
 結論としては「特に情報が少ない場合、外部の人間がみて不合理な決定だと思われる事でも、安易に陰謀論へ傾くべきではない」という事。
 それから偶々タイミングが被ってしまった安倍さんの件については「『安倍なつみ』という商品をマネージメントするビジネスマンとして商品の価値を守る手腕が稚拙」と「『安倍なつみ』という人間をマネージメントする教育者として安倍さん(やメンバー)の心の成長を促す手腕が稚拙」という論点をごっちゃにしてはいけないのではないかと思う。

日経BPクラシックス 決定の本質 キューバ・ミサイル危機の分析 第2版 I

日経BPクラシックス 決定の本質 キューバ・ミサイル危機の分析 第2版 I

日経BPクラシックス 決定の本質 キューバ・ミサイル危機の分析 第2版 II

日経BPクラシックス 決定の本質 キューバ・ミサイル危機の分析 第2版 II