パロップのブログ

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総選挙2003にあたって

前回(2001年7月)の参院選では「素人は票読みをせず、望みを述べろ」等と言った私だが、今回は恥を忍んで票読み投票をしようと思う。
個人的には、今の日本の状況は80年代の東ドイツ/チェコスロヴァキアハンガリーあたりに似ていると思っている。政治家の子弟が政治家となり、高級官僚の子弟が高級官僚になる。先代は少なくとも苦労をして辿り着いた地位に、子供は当たり前のように座る。行政機構や警察への信頼は揺らいでいるけれども、犯罪などへの不安が煽られて管理社会への誘惑にはあまり抵抗がない。さしあたっての生活には困っていないけれど、将来に不安がある。それは巨額の債務で維持されているだけで、一つ信用が失われれば連鎖して今あるシステムが崩壊しそうな雰囲気である。だから何かのきっかけがあれば、猛烈なデモやストが起きそうだが、火が足りない。燃料が足りない。
89年のヨーロッパの体験から分かった事は、既存のシステムを破壊する際、意外と大きな混乱は起きないと云う事だ。もちろん年金がパーになった高齢者もいるだろうし、国家財産をかすめ取った輩もいるだろう。しかし、何万人単位で餓死した人も出なかったし、警察機構が麻痺して大窃盗団が出現したという話も聞かなかった。現代の行政機構の実力があれば、政治が混乱しても日々のゴミ収集なんかには影響があらわれにくいとではないだろうかと楽観的に考えると、今のシステムを延命する事にかけては才能を発揮するであろう自民党よりも、うまく改革を進めるにしろ、今のシステムをますます機能不全に陥らせるにしろ、民主党という選択肢はありではないかと考えていた。

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ところがどっこい、我が岡山1区に舞い降りた民主党候補は菅直人の息子源太郎である。これには参った。お隣2区には東大→日銀→英国留学のエリートが落ちて来たし、民主党候補は公募だと聞いていたのに、縁故採用かよ! しかしまあ、「伝説のヒッキー」「へたれ2世」と2ちゃんでは煽られているものの、やはり現物をみて決めようと、10月22日、民主党岡山1区・2区合同企画「マニフェスト討論大会」に行って来た。結論から言えば、しゃべりは利く。2区候補の津村氏よりも上手い。東大エリート社会人経験者が人前でのスピーチだと「所詮若造」といった風なのに、あれだけ滑舌よくしゃべれるのだから、小学生の時から家族でディベートする環境にあったというだけあって、肝が座っているのか鈍感なのか。何にしろなかなかの好青年ぶりだった。
ただ内容の方向性は失敗していると思う。出馬表明当初、本人(たち)は若い有権者を想定して戦略を練っていたのだろうが、会場はおそらく労組から動員かけられたおっさんが9割、菅直人ヲタのおばさんが1割だった。多分、若い人はカンゲン氏みたいな「なんちゃって」が一番嫌いだと思う。「最近の若い人は保守的」というレッテルが正しいかは別として、少なくとも親の世代を馬鹿にするよりは「(自分はしたいと思わないが)よく働いたもんだ」と思っているだろう。おそらく若い人はノモ、イチローやナカータのように、結果を出したものが「おっさんってどうよ?」みたいな事を言う事は歓迎しても、へたれ2世が何を言っても、社会システム批判をしても、「ふーん、だから?」がオチだろう。だからと言って、民主党系列の労組おっさんを精一杯かき集めても保守地盤に支えられた自民党候補に小選挙区では勝てない事はずっと前から分かっていると思うのだが。
カンゲン氏の演説内容だが、カンゲン氏は「やり直しのきく教育の仕組み」などと言っているが、結局実体験でしかなく、せいぜい同じく実体験をした同年代の若者にしか届かない内容。それをおっさん世代のリアリティに訴えかけるのならば「あなたの息子さんが進路に迷ったことありませんか。もっと柔軟な進学システムだったら進路の選択にも心にゆとりを持って取り組めたのに、と思ったことありませんか? 苦労しませんでしたか? システムを変えた方がよいと思いませんか?」みたいな問い掛けをしないとダメだろう。「やり直しのきく仕組み」にしても、具体的に「どこどこの国のこれを参考にします」くらいは言え。大体、ドイツの高校卒業資格、フランスのバカロレア、米国の何回でも受けることが出来て大学進学の参考にする何とかというのにしても日本の制度からかけ離れていないし「日本の常識は世界の非常識」という程でもない。というか「大検とって大学行かなかったヤツが『システムに問題が』なんて言うな! 充分敗者復活するチャンスあったやん」とつっこまれそう(どうでもいいが、江田五月氏の「なるほどね〜」という相槌は何故かイライラする)。
それでも、私はカンゲン氏に投票するつもりだ。へたれカンゲン氏に税金から給与を払うのはしゃくだけど、この日のイベントで民主党幹部自ら言ったように「議員内閣制では議員が立法にかかわるケースは少ない」だろうし、1期生が重要な政策を担う事もないだろう。カンゲン氏が自らの政策を法案として提出する可能性もない。要するに、彼は民主党議員という票のコマ、そう割り切ろう。そうこうしているうちに現行システムは吹っ飛ぶ。江田五月菅直人世代あたりまでは退場する事になり、混乱期には質に限らず救世主扱いされた若手政治家も自然と淘汰される事だろう。

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番外編として、日本で政治システムを揺るがすような、つまり直前にあった選挙の結果を無効に思わせるような大衆行動が発生するのは何か、と考えたら、4月の巨人開幕3連戦で3連敗、「辰徳」コールがいつの間にか「ナベツネ辞めろ」コールへ、そして「小泉(または菅)辞めろ」コールに繋がる。或いはワールドカップ予選でまさかの敗戦を喫し、「ジーコ辞めろ」→「川淵辞めろ」→「小泉(または菅)辞めろ」とか。日頃抑えつけられていた鬱憤が集団心理を伴って爆発する。60年安保から70年代闘争まで「なんちゃって」ないきがり方しかしていない今の50〜60代にそういった爆発は期待出来そうもないから、野球よりはサッカーだろうか。
話は逸れるけど、団塊世代の多くがひきこもりを「甘えている」などと批判している割に中高年男性の自殺が多いのって、結局これまでこの世代が「心理的に受け入れられない社会」と対峙した事がなかったからじゃないかと思う。「苦労する社会」「競争が厳しい社会」「疲労する社会」とは対峙していても、それは結局、倍々ゲームで報われる社会だったわけで。リストラされてローン抱えて家族から必要だと思われなくなって初めて「おー、お前らの言ってた『生きづらい社会』ってこれか〜」では遅い。
更におまけだが、津村氏は岡山県中北部出身で祖父の代には地元の名士(校長だったか?)。カンゲン氏は、江田氏の盟友で岡山市議の羽場頼三郎氏が自らのサイトで「私が子供の頃から知っている源太郎に頼み込んだ」と明かしている。県西部の4区、5区には本物の落下傘っぽいのを選んでいるから、結局、江田氏一派は自分のお膝元では、当選して自民党に鞍替えしたり、落選して逃げ出すような公募でフラフラ寄って来た学歴エリートよりも、地縁血縁で抜けられない人間を選んだのだろうなあと思わせる。余程、これまで裏切り(鞍替え)にあって人間不信なんだろうか。万が一にも風が吹いて民主党菅直人(&側近に江田五月)政権が成立したら、祖先を岡山県中央部に発し、母体は社民連シリウス)の流れを汲むという、地縁血縁に依拠した少数独裁政権といわれても、あまり否定出来ない気もする。